「ミセレーレ~憐みたまえ~」ジョルジュ・ルオー展|北海道立函館美術館 2014年4月19日~6月26日
2014年のブログ記事を再掲します。
函館美術館で開催中の「ジョルジュ・ルオー展」に行ってきました。
とにかくいい展覧会だったのですが、・・・この会場で見た「ミセレーレ」がすごすぎて
思わずBLOGを立ち上げました。
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ルオーの版画作品「ミセレーレ」は、父親の死がきっかけとなり
「人間社会の奥底に巣食う悪、憐れな状況の中での人々の苦悩、
さらにはこうした罪に汚れた世界だからこそ求められる希望」をテーマとして制作開始されました。
その後1914年に第一次世界大戦が勃発してからは、人間の醜いエゴが噴出し、凄惨さをきわめる戦争への苦悩と、そうした人間に向けての祈りがこの作品の原動力となったそうです。
ルオーは体が弱かったこともあり戦争へは行かずに制作を続けました。
そして後に58枚の版画集として「ミセレーレ」が生まれたのでした。
この「ミセレーレ」58枚には、すべてルオーによる詩文のようなタイトルがつけられています。
「ミセレーレ」は、ラテン語の「主よ、憐れみたまえ」からとられたタイトルで、作品中にも聖書の一場面や、キリストをはじめとする登場人物が多く描かれています。
しかしルオーが目を向け心を砕いていて描いたのは、神聖化された信仰の場面ではなく
苦悩にみちた市井の人々、・・・生身の人間が必死に生きる姿でした。
私が印象に残った作品タイトルをメモしておきます。
「世の中は様々なれど、荒地に種蒔くは美しき仕事」
「歓楽の娘と呼ばれるが」
「自分の顔をつくらぬ者があろうか?」
「道の美しい時もある……悩みの果てぬ古き場末で」
「心高貴なれば、首こわばらず」
「盲人も、時には目明きを慰めた 」
そして、
「でも愛することができたなら、なんと楽しいことだろう」
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作品の生い立ちやこめられた意味はもちろんですが
とにかく実物の存在感がすごかったのです。
線の一本一本が、表情豊かで、・・・
まるで線一本が一枚の絵画のような重量感なのです。
こればかりは、実物を見ないとわからないと思います。
見にいくことが出来て、本当によかった。
「ミセレーレ」は、現代の日本にとって重要なメッセージを持つ作品だと感じました。
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ジョルジュ・ルオー展
北海道立函館美術館
2014年4月19日(土)~6月26日(木)