「装飾のある人物」の描き方~透明水彩絵の具による 重ね塗り制作

民族衣装など 伝統的な装束をまとった人物を描く過程です。
使用画材は
- 透明水彩絵の具(今回はウィンザー&ニュートンの固形水彩絵の具)
- 刷毛(柔らかで大きすぎないもの)
- 絵筆(水彩用の丸筆)
- マスキング液(今回はミツワの細タイプ)
- プラスチック消しゴム(小さくカットしたもの)
- 下描き用の鉛筆(2B程度)
- 筆洗
- 水彩用紙
です。
完成した絵と画材一式を並べました。
では過程を解説していきます。
下描き~下塗り
1・まず水彩用紙に鉛筆で下描きをします。
この時点で、装飾品や衣装の細部など細かい部分もできるだけ描きこむと
着彩のときに描きやすくなります。
ポイントは
- 影をつけずに線描で描くこと
- 出来上がりをイメージしながら強弱をつけて描くこと
- 書き損じた線は消しておくこと
- 面倒な細部ほどきちんと描くこと
です。
2・下地となる色を薄く塗ります。
刷毛に水をたっぷりめに含ませて
画面全体を刷毛で塗ります。
画面の水が乾かないうちに、ベースとなる色(今回は黄色系)を筆に含ませて
ポイントごとに置いていきます。
画面上の水で、色がにじんでいくのを見ながら
同系色の色を追加して 人物にポイントがいくように画面作りをしていきます。
画面が乾くとこのような下地が出来上がります。
3・影色を薄く塗ります。
人物全体の中で
- 特に暗いところ
- 黒髪など暗い色があるところ
- 影があるところ
- 形を目立たせたいところ
に影色として濃いブルーやグリーンを塗ります。(今回はブルーとグリーンを混ぜて使用しています)
暗いところや影のところを塗ると
形がはっきり見えてきます。
仕上げに向けて描きこみ
1・マスキング液で「強い光があたっている部分」をマスキングします。
マスキング液を塗ることで「明るい(紙が白い)まま残したい部分」をカバーすることで
絵の具がそれ以上つかなくなります。今回は装飾品についている石など特にピカッと光があたっている部分です。
2・強調したい部分に赤色を重ねます。
装飾のポイントになる部分や
横顔の頬にある影、また衣装のひだ部分など、影があってさらに強調したい部分に赤色をにじませていきます。
にじませ方は、下塗りと同じように 水だけつけた刷毛で画面に水分を与えてから
乾かないうちに絵の具を置いていくと自然な感じになります。
3・さらに強調したい部分に青色を重ねていきます。
装飾や衣装の細部を出すために
青→赤→青という順番で描きこみを重ねてきました。
複雑な細部を描くときに、一回ですべて描きこむのは難しいので
何段階かにわけて描きこみを重ねています。
また、特に暗い色の髪の毛部分も 同時に青色を重ねています。
4・さらに刷毛で水を塗り ニュアンスカラーを加えていきます。
いったん画面を乾かしてから 水を含ませた刷毛で人物をなぞり
画面が乾かないうちに明るめの茶色で大きな影を描きます。
5・細部を薄い茶色系で描きこんで形をはっきりさせます。
特に大切な 顔や手の表情などは
この時点で細い筆を使い描きこんでおきます。
仕上げ作業~完成
だいぶ画面がまとまってきました。
ここから仕上げ作業です。
1・マスキング液を消しゴムでこすって取り除いていきます。
乾いたマスキング液は小さくカットした消しゴムでこすって画面からはがします。
2・明るい黄色部分を 細い筆で重ねていきます。
衣装の中でも、とくに明るく鮮やかな黄色部分を
厚塗りで塗り重ねていきます。
また、宝石などの部分も濃い赤色などで塗って ポイントを作っていきます。
3・顔の細部なども一気に仕上げていきます。
もう重ね塗りする必要はないので、濃いめの色を細筆にとって
メイキャップ部分や輪郭など しっかり描きこみたい部分もどんどん描いていきます。
4・完成です。
今回使った色は 黄色・赤色・青色・茶色と少なめです。
仕上げに使った明るい黄色以外は すべて透明度の高い色で仕上げました。
特徴的な装飾も、メイキャップも、何段階かに分けて塗り重ねることで
濃くなりすぎることなく 立体感を調整しながら描き進めることができました。
今回使用したウィンザー&ニュートンの固形水彩絵の具です。
基本色セットでは派手な色味が出ないぶん、確実に色分けをして
まとまりある画面を仕上げることができます。
また画面への定着がいいので、紙質を選べば(コットンとパルプが両方入った紙がおすすめです)
何回も塗り重ねができます。
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