芸術が函館の救世主になる

北海道に移住して驚いたことがある。

マスコミが「食べる」ことばかりを取り上げているのだ。

人間の生活に不可欠な「衣」「食」「住」のうち、

テレビもラジオも雑誌も新聞もネットメディアも、とにかく「食」ばかりを取り上げる。

朝の北海道でローカルニュース番組を見てほしい。

「食」以外の情報がどれだけあるだろうか。

夕方のニュース番組もそうだ。どこのお店が美味しい、どの新商品が人気だという記事であふれている。

北海道の重要な産業が農業・漁業等なので 情報が食に偏るのは正しい姿かもしれないけれど

実際にあるはずの文化的な情報に光が当たらなすぎる気がしてならない。

 

私も北海道に「胃袋をつかまれている」1人だけれど、

美食の存在が揺るぎないからこそ、今後は他の要素が必要だ。

 

正直なところ 私は北海道、ことに函館の文化面に憧れて移住してきた。

北海道の文化に強烈に惹かれている、私みたいな人間も少なからずいる。

函館に膨大な利益をもたらし続けているロックバンド・「GLAY」は飲食関係ではない。

北海道の文化面に、道内メディアはもっともっと光を当てて欲しい。

 


 

私は2011年の東日本大震災のあとに北海道に移住してきた。

それまで生活していた関東(神奈川県横浜市)では連日

相次ぐ震災の被害、原子力発電所の事故といったニュースにどっぷりつかっていたのが

北海道に来たら空気が全く違う。美食のニュースが朝から流れて、どのメディアでも美味しい店情報がメイン。

すっかり面食らってしまった。

「ああ、平和なんだな」とその時は思った。

でも、コロナ禍のなか2021年を終えようとしている今は違う。

 


 

北海道の魅力である「美食」と「観光」が大打撃を受け、

数年前とまったく違う生活を味わったいま、

「美食」「観光」だけにとどまらない北海道の魅力をしっかり確立し直すべきだと思う。

それは北海道に住む「人」の魅力だ。

「人の魅力=文化」ではないだろうか。

 

オリンピックに先立って アイヌの人々が受け継いできた文化を伝える施設「ウポポイ」が産声をあげた。

私はかつてのアイヌの人々の生活と文化を素晴らしいと思う。

同じように、現代を生きるアイヌの人々の暮らしや思いも素晴らしいと思う。

ウポポイの施設が出来る前に白老に行った。

そこで、アイヌの人々に伝わる踊りを解説してくれた人のことが忘れられない。

その人は日本語・韓国語・中国語・英語で解説をしてくれた。

分かりやすくジェスチャーを加えながらはっきりした表現できっちりと解説をしてくれた。

なんとしてでも伝えるという気迫を感じた。

昔ばかりに文化の光があるわけではない、いま現在の文化・表現・生活にも同じだけの輝きがある。

 


 

北海道の中でも函館は、古くからの文化都市で

多くの偉人や文化人たちも 函館を愛し作品に残してきた。

文芸・美術・音楽・舞台・・・あらゆる文化を、深い歴史の懐で受け止め

育ててきた街が函館だ。

ただ、最近は 函館の芸術関係者から悲観の声が上がっているのを

耳にすることが増えてきた。

芸術系の催しなどが衰退しているのだという。

 

私は一方ではその通りだと思う。

市や道が主催する芸術系のイベントは、コロナ禍の前からやや下火になっている印象があった。

芸術関係そのものが衰退しているのか?芸術を志す若者が減っているのか?

そういうわけではない。

 

私は、市や道が主催するイベントに出さない層の表現者の中に、素晴らしい人たちがたくさんいることを知っている。

彼らは若くて、

団体展などには出さないけれども作品を作っている。

自分で学びたいことを学んでいる。

そこに、光がある。

 


 

私たち就職氷河期の年代は、

昭和の失敗をたくさん目にして その被害を被ってきた世代だ。

昭和のままのやり方で、令和がうまくいくはずはないとどこかで思っている。

私たち世代が 希望を予感して、夢を描いて実行する方向は おそらく昭和の方向ではない。

 

さらに私たちより下の世代には、私たちが見ているのともっと違う方向を見て、

そして、思いっきり楽しく生きて欲しいと思う。

芸術や文化は、人生を楽しむためのもの。

そして自分自身を楽しむためのものだ。

 

私は函館の街の、函館の人の、

「自分を楽しむ」という姿勢から 揺るぎない文化を感じる。

 

生活がそこに根差しているからこそ、美味しい食事や絶景の観光スポットが生まれるのだと思う。

コロナ禍で疲弊しきったいま、それでもムクムクと復活に向けて動き出した北海道・函館のなかで

重要なポジションにいる「メディアの中の人たち」は、

きっと芸術を摂取しているはずだ。

芸術教育とは、とりもなおさず「自分自身を発見して楽しむ」ことが基盤だと思う。

それが無ければ、美味しい食事も美しい景色も生まれない。

 

先人が思いきり摂取して成長してきた文化芸術。

それはかつて当たり前に生活の中にあったのだろうけど、

今はだんだんと見つけづらくなっている。

今こそ函館は、北海道は、

芸術方面に大きく舵を切るべきだ。

 

コンクールや発表会を強化する前に土台を作る必要がある。

 

芸術方面の情報をしっかり扱えるメディアを増やし、

目耳と感覚を培う環境をつくる。

全国規模の芸術教育を受講できる施設をつくる。

 

もうすでに、何十年も前に函館では出来上がっていたものだ。

今は衰退しているように見えるけれど。

 

「函館にあるもの」を回復させるひとつのカギが「芸術」である。

 

 

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