好きな画家・高島野十郎~見れば見るほど遠のく絵~
高島野十郎を知ったのは、20代の頃でした。
東京都町田市の書店で『高島野十郎画集―作品と遺稿』(求龍堂)を入手しました。
当時の私は、電車賃を出すのも苦しいほど きり詰めた生活をしていましたが^^;
その日はたまたまバイトのお給料があったのでした。
大きくて重いこの画集を抱えて、書店のエスカレーターを降りたときのことを今でもよく覚えています。
「高島野十郎の絵を、こんなにたくさん見られる!」
手が痛くなるほどの画集の重さが かえって嬉しいのでした。
初めて高島野十郎の絵を見たのは、久世光彦の著作「怖い絵」だったと記憶しています。
甘さのある闇の中に、短くなった蝋燭が一本灯されている絵でした。
その独特な緻密さにあてられて、折に触れて思い出していた作家、高島野十郎の画集。
・・・この画集を手にしてからもう8年もたつのに、
その間 何十回・何百回とこの画集を見ているのに、
いまだに高島野十郎の画集を開くときには、緊張してしまいます。
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高島野十郎についての記録を読んでいると、
この画家は、自分の作品に対して一定の距離を保ち、
常に緊張感を持っていたのではないかと感じます。
高島野十郎の作品は、私にとってものすごく「自己」を感じる画面ですが、
同時に 自分を投入しすぎて飽和状態となった果てに、
透明になり静まりかえっている印象があります。
高島野十郎は、その生活ぶりを「過激な隠遁」と呼ばれ
「孤高の画家」とされています。
「大切なものには近寄らない」
そんな感覚を、高島野十郎の作品から感じる私にとっては
あまりにすべてを 緻密に観察しすぎて 完璧に描きすぎて・・・
見れば見るほどに遠のいていく ように見えます。
けれども、同時に
一定の距離を保ち続けていれば、ずっと見ていられる。
近づきさえしなければ、ずっとそこに居てくれる。
そんな、安心感があるのもまた 事実なのです。