とにかく格好いい!!夢中になった明治~昭和初期の挿絵画家たち

 

皆さん、「挿絵」というと何をイメージしますか?
現代なら、小説を彩るデジタルペイントでしょうか?

 

発売日: 2014年09月05日頃
著者/編集: 白井かなこ
出版社: インターグロー , 主婦の友社
サイズ: 文庫
ページ数: 253p

 

こちらの書籍は、小説家・白井かなこさんのオリジナル小説『Starlet』。
(私ツキムラが表紙を描かせて頂きました。ありがとうございます;;)

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私は十代のころから挿絵画家に憧れてきました。
正直なところ、十代の頃の夢は「挿絵画家」だったのです。

そのきっかけになったのは、とある展覧会で明治~昭和戦前の挿絵や装幀を見たことでした。

 

1997年に神奈川近代文学館で開催された『文学の挿絵と装幀展』。

 

 

この展覧会を見たことがひとつのターニングポイントでした。

 

 

 

また、この1997年ころにはタイミングのいいことに、
愛読していた漫画雑誌『ガロ』で挿絵の特集が組まれたのでした。

 

 

(私のスクラップブックより「ガロ」挿絵特集の切り抜き)

 

携帯もネットも知らなかった時代なので、こういった展覧会のパンフレットや雑誌記事は、貴重な貴重な情報源でした。
対談に出て来る作家名を図書館で探したり、一部を暗誦できるほど読み込んだりしていました。

またこの時期は、佐伯俊男さんの作品集が続けて発売されたこともあり、

 

 

(こちらもツキムラのスクラップブックより)
たぶん私と同じような趣味嗜好のファンたちが、一斉に活気づいたんだろうなあ・・・と思います。

 




 

 

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ではここから、幕末~昭和戦前に活躍していた
私がぞっこんの挿絵画家をご紹介します。

 

 

 

河野通勢(1895~1950)

岸田劉生や「白樺」同人たちと交友を結び、デューラーの細密描写や浮世絵などの影響を受けた自らの素描を「第一流」と称しました。
自分の絵を「第一流」と言い切れる内面の強さが、絵の堅牢さに出ていますね。

幕末・明治初期の風俗の素養を武器に幅広く活躍しました。

 

 

リアルタッチにはしることなく、あくまで「素描」の範囲で 空間や空気感、素材の質感を描きだしています。
この描きっぷりは強烈です。また、デフォルメされた人物のフォルムが不思議なリアリティをかもし出していて、惹きつけられます。

 

 

 

岩田専太郎(1901~1974)

伊藤深水に師事したあと博物館系の雑誌から挿絵の道に入った画家です。

伝統的な技術や様式を受け継ぎつつ、
当時の印刷技術や流行風俗を柔軟に取り入れて第一線で活躍しました。

 

 

『文学の挿絵と装幀展』で展示されていた作品の中でも、
連載小説「雪之丞変化」の挿絵は素晴らしかったです。
余白まできれいで・・・どの人物も悲しさをおびた美しさで。印象に残っています。

 

 

 

田代光(1913~1996)

 

大正2年東京下谷、練塀小路に生まれる。
昭和6年、18歳で雑誌『キング』に挿絵を描いてデビュー
昭和19年、31歳で海軍に応召され、
歌手の霧島昇や画家の中原淳一など、そうそうたる顔ぶれのメンバーの一員として

横須賀海兵団に入団。

 

 

この臨場感。画面全体から「時代の波に乗っている」とでもいった勢いが溢れています。

 

 

 

伊藤彦造(1904~2004)

剣豪、伊藤一刀斉の末裔に生まれた伊藤彦造。
この方はほんっとに格好いい・・・・作品も本人も。伝説的な存在です。
自らを「画人ではなく武人」と称しました。

 

 

さまざまな伊藤彦造のエピソードを読むごとに、
絵に伊藤彦造が乗り移っているのを感じます。

こんなクオリティの作品が、リアルタイムで掲載されていった当時のメディアって、
すごい刺激が強い媒体だっただろうなあと感じます。

肉筆画の強さが印刷物からもにじみ出ていますね

 

余談ですが、伊藤彦造さんは余生を東京都町田市で過ごされていたそうです。
町田の近くに住んでいた私は、それだけでドキドキしていました><

 

 

 

恩地孝四郎(1891~1955)

東京生まれ。竹久夢二に私淑し、萩原朔太郎「月に吠える」の挿絵などを手掛けました。

 

 

 

すごくモダンで惹きつけられる画面ですよね!

 

じつは当初、田中共吉という若手作家が「月に吠える」の挿絵に決まっていてましたが
田中共吉は制作半ば、23歳で急逝してしまったそうです。

その、田中版の「月に吠える」挿絵がこちらです↓

 

 

あまりに早すぎる旅立ち。

しかし、現代でも一定のファンがいる画家です。

 

 

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実際には、もっと数えきれないほどの挿絵画家が活躍していたことでしょう。

また 挿絵が専業ではない画家たちが描いた挿絵も、数多くあると聞きます。

挿絵は、まず物語ありき です。

その物語世界をイメージ豊かに拡張するための装置として
雑誌や小説本を彩ってきました。

 

「挿絵」は、いくつもの制約がある仕事ですが、

その中で興味深い作品が次々に生まれてきました。

 

時代の「熱」は、時を経ても作品に宿っています。

その「熱」を感じるからこそ、私は挿絵というジャンルに惹かれるのかもしれません。

 

 




 

 

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