「加賀谷次長、狙われてます!」生育環境を自分の手で塗り替えていくサバイバル漫画(ネタバレなし)

 

先日、何気なく目についたネット配信の漫画リンクを開いて

読み始めたら見事にはまってしまいました。

小山田容子 作「加賀谷次長、狙われてます!」

既刊をすべて購入し、一晩で読み終えてしまいました。

続きが楽しみです。

 

 

 

 

 

ブログに感想を綴ろうと思った理由は、

X(twitter)で感想を呟いてみたのだけど文字数が全然収まりきらなかったからです。

 

この漫画は息の長い作品だと思います。映画化してもドラマ化してもヒットするはずです。

でも、同時に メディア展開をしなくてもよい、むしろそういった展開を封じて漫画作品として長く生きていってほしいと勝手な思いもあふれてしまいます。

なんだか、このモヤモヤとした幸福感は一回ブログに書かないと収まらない感じで・・

不思議な魅力に満ちた作品なのでした。

 

 


 

小山田容子「加賀谷次長、狙われてます!」は、吉田秋生「カリフォルニア物語」の対をなす作品

 

天才漫画家・吉田秋生が二十歳の頃にスタートした作品「カリフォルニア物語」。

 

「カリフォルニア物語」内容紹介

青い空、緑の大地、光輝くカリフォルニア。だが、カリフォルニアだっていいことばかりじゃない。父親との確執、兄へのコンプレックスなど、さまざまな人間関係のきずなを振り切ろうと高校をドロップアウトしたヒースは、冬のニューヨークにやってきた。相棒で同居人のイーヴ、悪友ブッチ、その妹で恋人のスウェナ……灰色の空のもと、大都会の片隅でひとつの青春が始まった。吉田秋生の名を世に知らしめた初期傑作青春ロマン。(小学館作品ページより引用)

 

ベテランの小山田容子先生と、当時二十歳の吉田秋生先生の作品を比較するのは不適切かもしれませんが

作品がもたらしてくれる「救い」を思い浮かべたときに

私の中ではこの2作品が同じ位置でキラキラと輝いているのです。

 

「カリフォルニア物語」が陰だとしたら、「加賀谷次長、狙われてます!」は陽。

 

生まれた土地や家庭環境が 自身にもたらすマイナスの重みを

歩みの中で少しずつ手放していく。

文字通り「自分の道を作っていく」という「救い」がこの2作品には描かれています。

 

育った環境の内部のことは自分だけの歴史です。

表立って問題のある生育環境ではないとしても、

背負うものはみんなそれぞれにあるはずです。

その背負うものが作品の中に自分事のように描かれていたとき、

私たちは「共感」してくれる他者の存在を夢見ることが出来ます。

 

 

今この現実で出会えなくても、フィクションの中の人物だとしても、

自分の背負っているマイナスの重みに「共感」してくれる他者の存在 が取り上げられた作品には救いを感じます。

そんな救いがあるこの2作品。

 

「カリフォルニア物語」が生まれてから40年という時を経て、

生育環境を自分で塗り替えていくサバイバルを優雅に、豊かな漫画の表現をもって、優しく描き出しているという点で「加賀谷次長、狙われてます!」は貴重な作品だと思います。

 


 

加賀谷次長よりも巨きな「裏主人公」の存在

 

電子単行本4巻にして、裏主人公が登場します。

この裏主人公は、裏番長と同じ意味で捉えてもらえるとありがたいです。

 

番長」の記事における「裏番長」の解説

(表の)番長とは違い不良グループ陰か指図し悪事やらせる人物のこと。外見はごく普通または正反対優等生だったりすることが多く、その服装態度などからは容易に判別出来ない時には存在立証自体難しい)のが特徴である。最近では不良と関係なく、目立たないがある組織・団体など事実上操っている存在(=黒幕)や、リーダーではないが皆から頼りにされている、または人気のある人物のことを指す。また人に限らず一般的知名度は低いが業界内では人気がある物のことも裏番長と呼ばれる

ウィキペディア(Wikipedia)より引用

 

「え、4巻まで読まないと裏主人公が出てこないの??」

と思ってしまいますが・・・そうなんです。

裏主人公にたどり着くまでには4巻ぶんのお話で加賀谷次長の生きる世界を描写しなければならなかったのだ!というのは、読めばわかります。

2巻で出てきてもダメだったんです・・・

この裏主人公が、とにかく不思議な人物でよく出来ています。

 

 

 

大人になる前に、一生を左右するほどのマイナスの重みを背負ってしまう。

そんな現実を背負う子どもは多くいます。

 

そのマイナスの重みのぶん、武装するかのように 多くのことを身に着けたり、スキルを磨いたりして抜きんでていく子どもたち。

そんな存在は「加賀谷次長、狙われてます!」の中にも登場し、彼らは物語の主格をなしていきます。

 

この「裏主人公」もそういったサバイバルを潜り抜けてきた人物だとされていますが

その背景が見えないほどの善良さと、素朴な優しさがあり・・・これが本当に不思議なのです。

 

どうやったらこんな大人になるのだろう?

どんな人に出会い、どんな体験をしたんだろう?

想像がつかないほどの光の強さを発しているのです。

 

2023年9月現在では、まだこの「裏主人公」の過去はつまびらかにされていません。

この不思議な「裏主人公」の過去を見届けなければ、と一読者である私は鼻息を荒くしているのです。

 

今後の展開と、明らかになる登場人物たちの過去がとても楽しみです。

 

 

 

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