「東京でなければ」という空気の変化

「東京でなければ」という空気に変化が出てきた。
今年に入り、いよいよ日本が変わりつつあるなと感じています。
今までは東京が日本の中心であり、先端であり、「まずは東京や都会で何かをしなければ」という感覚が根強かったのではないでしょうか。
私も子ども時代からずっとそう思っていたので10代・20代は東京で制作発表をしていました。また移住後も受注の仕事は東京をメインにしてきました。
現在、日本の主要な拠点はほとんどが東京にあります。
けれども、このままで今後もいられるかというと それは少し違うかも?という感覚になっていました。
そう感じるきっかけとして大きかったのは、新型コロナウィルス対策としてリモートワークが増えたことや
都心でのウィルス感染リスクが高まり、
地方の需要が増えつつあることなどです。
そうは言ってもなんだかんだで50年経っても東京をメインに日本は動くと思いますが、
人々の生活や意識は ゆっくりとさらに東京を離れていくんじゃないかな?
出生地にかかわらず 成人したら個人個人が自分に合った土地に所縁を得て 生活するのが当たり前になるんじゃないかな?
と思います。(すでにその動きは顕著になっていると思いますが)
ライフスタイルからの移住は、今よりもっと一般的になる気がします。
制作と発表、地方と都会。
ライフスタイルからの移住について 自分を振り返って考えてみます。
絵を描いている私自身を考えるとき、制作と生活は密着しています。
制作(=ものを作ること)は、居住地から外へ出かけて行ってやることではなく
日常生活の中でこつこつと積み上げていくものです。
一方、
発表は、積み上げてきた制作(=作ったもの)を人に見てもらうことですから
非日常生活かもしれません。
私自身が感じている、「地方で制作するよい部分」と「都会で発表するよい部分」をざっくりまとめると以下のようになります。
地方で制作するよい部分
- 安定した状態での制作が可能。
- 地域に根差したオリジナリティが出せる。
- 自分のバックグラウンドを意識しやすい(何故この土地で活動するのか?など根本的スタンスをつかみやすい)。
- コスト(制作費・制作場所・生活費)をコントロールしやすい。
都会で発表するよい部分
- 大手メディアにアクセスしやすい。
- 会場が多種多様。
- 集客パターンが整っている。
- お手本が多くある。
表現・クリエイトの世界をみたとき、
地方で制作した作品を、東京など都会で発表する作家が沢山います。
東京都内で開催する美術団体展なども、
実際に東京在住の出展者はひとにぎりで
ほとんどは普段 各地方で制作をしている方が多いものです。
日常生活は地元で送り、非日常の場として 東京などの都会で作品発表をするのは
よく見られるケースです。
地方で制作・発表をしている私の場合
私は10年ほど東京で制作・発表をしたのちに北海道に移住しました。
結果、北海道に来てからのほうが制作・発表ともに手ごたえを感じています。
自分にとって嬉しい反応が多く得られるようになってきたのです。
発表を重ねるごとに
この土地(北海道)に住む人たちに「作品を見てもらいたい」という思いが強くなってきました。
北海道に移住してから今までの9年間
作品発表を重ねるごとに、地元の色々な方から感想や反応をいただき
それを励みに また制作して発表する・・という流れを繰り返すうちに
作品発表を通したコミュニケーションが充実してきたのです。
現在の私にとっては、「作品の制作発表は相手あってのコミュニケーション」なので
「誰に伝えたいか」はとても重要です。
東京にいたころは、「自分自身を表現したい」という思いがとても強かったのですが
北海道に来てからは、自分自身と作品のその先に居る相手を考えるようになりました。
北海道という土地からインスピレーションを受けて制作することが増えたので
この土地に住む人々に 作品がどう見えるのか、何が伝わるのか。
東京では一方通行のようだった自分の表現のやり方に変化が出てきました。
地方の魅力。
どこに住んで何をするのか?
結局は、自分で体験してみないとわかりません。
ただ、今年に入ってからの新型コロナ対策によるリモートワークやリモート授業の普及ぶりをみると
ネット環境さえあれば、どこに住んでもある程度のことが出来るようになるんじゃないかな?と思ってしまいました。
住む場所を変えることは自分の人生を変えることです。
ただ、今後 何が何でも「東京でなければ」という意識は
ゆっくり変化していくと思います。
私は今後も「地方ならではのあり方」を考えて実践していきたいです。
「東京のようにやる」ことが、地方に馴染まないのは当然です。
地方において、東京のやり方が通用しないというのはすごく大事なこと。
地方の魅力を感じるたびに、
ここでしか出来ないことをしたい
ここでしか作れないものを作りたい
と思う
今日この頃なのでした。